スキップしてメイン コンテンツに移動

8章耐震改修工事 14節高力ボルト接合(改修標準仕様書(建築)H28)

国土交通省 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版

8章 耐震改修工事

14節 高力ボルト接合

8.14.1 適用範囲

この節は,トルシア形高力ボルト又はJIS形高力ボルトによる摩擦接合に適用する。

8.14.2 摩擦面の性能及び処理

(a) 摩擦面は,すべり係数値が0.45以上確保できるよう,ミルスケールをディスクグラインダー掛け等により,原則として,添え板全面の範囲について除去したのち,一様に錆を発生させたものとする。
 ただし,ショットブラスト又はグリットブラストにより摩擦面の表面粗度を 50μmRz以上確保でき,監督職員の承諾を受けた場合には,錆の発生を要しない。

(b) 摩擦面には,鋼材のまくれ,ひずみ,ディスクグラインダー掛けによるへこみ等がないものとする。

(c) すべり係数試験の実施,試験の方法,試験片の摩擦面の状態は,特記による。

(d) フィラープレートは,鋼板とし,(a)と同様に処理する。

(e) ボルトの頭部又は座金の接触面に,鋼材のまくれ,ひずみ等がある場合は,ディスクグラインダー掛けにより取り除き,平らに仕上げる。

8.14.3 標準ボルト張力

標準ボルト張力は,表 8.14.1による。
表 8.14.1 標準ボルト張力

8.14.4 ボルトセットの取扱い

(a) ボルトセットは,包装のまま施工場所まで運搬し,施工直前に包装を解く。
(b) 包装を解いて使用しなかったボルトセットは,再び包装して保管する。
(c) 試験及び締付け機器の調整に用いたボルトは,試験及び機器の調整に再使用しない。
 また,本接合にも使用しない。

8.14.5 締付け施工法の確認

(a) 高力ボルトの締付け作業開始時に,工事で採用する締付け施工法に関する確認作業を行う。
(b) 確認の方法は,JASS 6 6.5[締付け施工法の確認]に準ずるものとする。

8.14.6 組立

(a) 摩擦面は,摩擦力を低減させるものが発生又は付着しないよう保護する。
 また,浮き錆,油,塗料,じんあい等が発生又は付着した場合は,組立に先立ち取り除く。
(b) 接合部の材厚の差等により1mmを超える肌すきは,フィラープレートを用いて補う。
(c) ボルト頭部又はナットと接合部材の面が,1/20 以上傾斜している場合は,勾配座金を使用する。
(d) 組立後,ボルト孔心が一致せずボルトが挿入できないものは,添え板等を取り替える。

8.14.7 締付け

(a) 本接合に先立ち,仮ボルトで締付けを行い,板の密着を図る。
(b) 締付けに先立ち,ボルトの長さ,材質,ねじの呼び等が施工箇所に適したものであることを確認する。
(c) ボルトを取り付け,一次締め,マーキング,本締めの順で行う。
(d) 1群のボルトの締付けは,群の中央部から周辺に向かう順序で行う。
(e) 一次締めは,表8.14.2によるトルク値でナットを回転させて行う。
表 8.14.2 一次締付けトルク値

(f) 一次締めを終わったボルトのマーキングは,ボルト,ナット,座金及び母材 (添え板) にかけて行う。
(g) 本締めは,標準ボルト張力が得られるよう,次により締め付ける。
 (1) トルシア形高力ボルトは専用のレンチを用いてピンテールが破断するまで締め付ける。
 (2) JIS形高力ボルトはトルクコントロール法又はナット回転法で締め付ける。
  なお,ナット回転法の場合のナット回転量は 120°(M12は,60°)とし,ボルトの長さがねじの呼びの5倍を超える場合の回転量は,特記による。
(h) 作業場所の温度が 0℃以下になり着氷のおそれがある場合には,原則として,締付け作業を行わない。

8.14.8 締付けの確認 

(a) トルシア形高力ボルト
 (1) 締付け完了後に,一次締めの際につけたマーキングのずれ,ピンテールの破断等により全数本締めの完了したこと,とも回り及び軸回りの有無,ナット回転量並びにナット面から出たボルトの余長を確認する。
 (2) (1)の結果,ナット回転量に著しいばらつきの認められる群については,そのボルト群のすべてのボルトのナット回転量を測定し,平均回転角度を算出し,平均回転角度±30°の範囲のものを合格とする。
 (3) ボルトの余長は、ナット面から突き出た長さが、ねじ1~6山の範囲のものを合格とする。

(b) JIS形高力ボルト
 (1) トルクコントロール法による場合
  (ⅰ) 締付け完了後に,一次締めの際につけたマーキングのずれにより,全数本締めの完了したこと,とも回りの有無,ナット回転量及びナット面から出たボルトの余長を確認する。
  (ⅱ) ナット回転量に著しいばらつきの認められる締付け群については,すべてのボルトについてトルクレンチを用いナットを追締めすることにより,締付けトルク値の適否を確認する。
   この結果,作業前に調整した平均トルク値の±10%以内にあるものを合格とする。
  (ⅲ) ボルトの余長は,(a)(3)による。
  (ⅳ) (ⅱ)の結果,締付け不足の認められた場合は,所定のトルクまで追締めする。

 (2) ナット回転法による場合
  (ⅰ) 締付け完了後に,一次締めの際につけたマーキングのずれにより,全数本締めの完了したこと,とも回りの有無,ナット回転量及びナット面から出たボルトの余長を確認する。
  (ⅱ) ナットの回転量が規定値±30°(M12 は,-0°~+30°)の範囲にあるものを合格とする。
  (ⅲ) (ⅱ)の結果,回転量が不足しているボルトは,所定の回転量まで追締めする。
   なお,回転量が許容範囲を超えたものは,取り替える。
  (ⅳ) ボルトの余長は,(a)(3)による。

(c) 締付け完了後のボルトの形状及び余長が確保されていることを確認する。

(d) (a)(2),(b)(1)(ⅱ)及び(b)(2)(ⅱ)の結果不合格となった場合,ナットとボルト,座金等がとも回り又は軸回りを生じた場合,ナット回転量に異常が認められた場合又はナット面から突き出た余長が過大若しくは過小の場合は,当該ボルトセットを新しいものに取り替える。

(e) 一度使用したボルトセットは,再度,本締めに使用しない。

(f) 締付け確認の記録により,監督職員の検査を受ける。

8.14.9 締付け及び確認用機器 

(a) 締付け及び確認用機器は,ボルトに適したものとし,よく点検整備されたものとする。
(b) トルクコントロール式電動レンチ等のトルク制御機能を持った機器は,毎日1回作業開始前にトルクの誤差が所要トルクの±7%程度になるまで調整を行い,その結果を記録する。

国土交通省大臣官房官庁営繕部 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版(H28.6 一部改定)の複製です。

元の標準仕様書は、↓ こちらからダウンロードできます。
 官庁営繕:公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版 - 国土交通省

なお、元となる標準仕様書の改定周期は3年となっています。
次は平成31年版(または新元号元年版)になると思いますが、最新版が発行されたら、そちらを参照してください。

コメント

共有する


関連コンテンツ